井上成美

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この本は、なにか賞を取ってるんですよね。
いろいろな提督の伝記があります。
伝記刊行会なんて、会を作って編集する形が多いんですが、
非売品のものも多くあります。増刷なんで、まず考えにくい。
ところが、この井上成美伝記刊行会の作った『井上成美』は、
初版が昭和57年。
ボクの持っているのは第10版、で昭和62年のものです。
本として、資料として価値を認められた作品といえます。

この存在は早くから知っていましたし、
売ってる店舗も知ってました。
ボクは、はじめは本など書く気はなく、
ただ知りたくて古本を読み漁っていました。
読み漁るといっても、ボクは本を読むのが遅いんで、
それほどのペースでは読めないわけです。
そんな人間からしますと、このような厚い本
(広辞苑とまではいきませんが、中型辞典よりは大ぶりです)
は、気後れしますし、金額的にも、
いつもは300円、500円とかで買っているのに、
もう一個丸がついてるんです。
でも、そういう理由でためらって、
次の機会に無くなっていた本などもありまして、
やっぱり、見つけたときは買うときだな。と、
それでも、厚い本ですから、
買ってからもしばらく飾ってありました。

そして、この本を読みだした頃には、
井上さんの話題性のあるエピソードは、ほぼ知ってましたから、
新たに、そうなんだ。というものはなかったんですが、
すごく大切なことに気づいたんですね。
小説に出てくるセリフなど細かい部分はデフォルメされたり、
作家の思いによって屈折することがあるということです。
このことに気づいてからは、
なるべく一次資料に近いものを探すようになりました。
ただし、注意点もありますね。
自叙伝であれば、その人の性格によっては、
小説家以上の屈折があることがあるということ。

井上成美

井上成美伝記刊行会 

  目次
 はじめに
第一章
 生いたち
  君子は人の美を成す
  一本気で厳格な父
  母は琴に堪能な姫君
  強い個性の兄弟たち
  殿様ご自慢の「シゲちゃん」
  寄宿舎のような自治生活
 自由と規律と夢の青春
    ――兵学校生徒時代――
  英語が苦手の三号生徒
  バッジが襟に光る井上伍長
議論より実践の宗谷組
    ――少尉候補生時代――
  われら”ベッキ組”(近海航海)
  兵卒並の宗谷組候補生(遠洋航海)
  教育の成果は二十年後
  最先任者として少尉任官
第二章
 勉学、結婚、そして海へ
    ――初級将校から大尉まで――
  遣英艦隊として皇帝載冠式へ(鞍馬乗組)
  米内、山本との出会い(砲術学校・水雷学校普通科学生)
  物足りない初陣(高千穂・比叡乗組から第一次大戦へ)
  一人前の海軍将校に(桜乗組と扶桑分隊長)
  四年ぶりの陸上生活(海大乙種学生・専修学生)
  再び海へ(淀航海長)
 西欧精神に学ぶ
    ――スイス・ドイツ・フランス駐在時代――
  ドイツ語の夢を見た(スイス駐在)
  高い身分には義務が伴う(ドイツ駐在)
  義務感旺盛な西欧人に接して(フランス駐在)
 律儀で折り目正しい航海長
    ――球磨航海長時代――
  任務遂行に全力傾注
  シベリア出兵と井上の戦争観
 エリートへの関門
    ――海大甲種学生時代――
  筆答六十番、口頭一番
  恩賜の軍刀はもらわず
 初めての海軍省勤務
    ――軍務局B局員時代――
  法律を基礎から勉強
  生涯の友、榎本を知る
 国民性にガッカリ
    ――イタリア駐在武官時代――
  彫刻家の意欲を誘った井上の顔
  高木惣吉との出会い
 軍政畑からの戦略教官
    ――海大教官時代――
  異論よぶ独自の教授方針
  探偵小説と戦略の関係
  情報を重視した先見性
  N二乗法則と軍縮条約
第三章
 孤独な闘い
    ――軍務局長第一課長時代――
  軍政参画の第一歩
  無理が過ぎれば道理が引っ込む(軍令部条例と省部互渉規程の改定)
 馘どころか一国一城の主
    ――比叡艦長時代――
  失意のなかに得た好ポスト
  艦隊派のねたみ
  怪しい会合には出るな
  満州国皇帝の御召艦
  ニミッツとの出合い
  長井宅の完成と航空写真
 米内光政との初コンビ
    ――横須賀鎮守府参謀長時代――
  参謀長は長官の小間使い
  二・二六事件を予測して
  女は不得手、隠し芸は七面相
 機関科将校問題に取り組んで
    ――軍令部出仕兼海軍省出仕時代――
  差別の歴史的背景
  結論は一系化、実施されたのは七年後
 日独伊三国軍事同盟の阻止
    ――軍務局長時代――
  海軍省の”左派”トリオ
  国軍を政策に使うは邪道なり
  理に徹しすぎる余り
 事変処理に手腕を買われて
    ――支那方面艦隊参謀長時代――
  「級友三代相伝」のポスト
  馘を覚悟ならどうぞ
  軍楽隊も”指揮”した参謀長
  矛盾に苦しむ作戦指導
 日米戦争形態の的確な予測
    ――航空本部長時代――
  中央は人も空気も変わっていた
  すべてはあとの祭り、三国同盟
  艦隊決戦思想を打破した新軍備計画論
  わずかな機会を捉え戦争回避に努力(次官代理)
  南部仏印進駐に警告を重ねる
第四章
 史上初めての母艦決戦
    ――第四艦隊司令長官時代――
  広大な防備海域、旧式の兵力
  長官の優雅な一日
  コンパクトを少女に贈る
  ウェーク攻略に一度は失敗
  珊瑚海海戦は「消極的」だったか
 時流に抗してジェントルマン教育
    ――海軍兵学校長時代――
  母校の校長へ
  戦時教育の苦心
  ジェントルマンをつくる
  みがけますらを 大和だましひ
  数学パズルと英英辞典
  マンモスクラスの誕生
  実らぬ稲を刈るな
  巣立った若者たち
  全生徒の眼に灼き付いた答礼
 戦争終結への決断と行動
    ――海軍次官・軍事参議官時代――
  政治のときは天井を
  戦いに即さぬ赤レンガの空気
  絶望的な戦況
  政治嫌いの政治活動
  戦敗れて大将あり
  有終の美を全うせよ
第五章
 隠棲の日々
    ――戦後の生活――
  ギターを弾く老提督
  苦悩の生活の始まり
  子供らに愛を注いだ英語塾
  清貧の中にも矜持を保つ
  旧部下たちに接して
  働いて働きぬく生活
  小松でも英会話の先生
  病に倒れる
  再婚の式はお稲荷さんで
  防大の正門はくぐらず
  兵学校の教え子たちとの交流
  世に出た”荒崎放談”
  終焉
  残された聖書と讃美歌
  悲しくも立証された予言
 協力者名簿
 参考文献
資料編

この資料編がかなりのボリュームでしてね。
339ページ、しかも字が小さい。

『新軍備計画論』のなかの「日米戦争の形態」

ちょっと、軽い言葉にします。

日本がアメリカと戦うことになった場合、
負けないというやり方を狙えないでもない。
でも、アメリカを負かすことはできない。これは明白。
アメリカは広いから
向こうが音を上げるところまではやっつけられない。
完全な海上封鎖はできないし、
できたところで向こうは海外依存してないから意味がない。
逆にアメリカが日本を攻める場合、
首都占領も可能だし、海上封鎖も可能。
これやられたら日本はお手上げ。

だから日本はアメリカとやっちゃダメだし、
やるならどうやって負けないようにするかを考えて、
それに沿った軍備をしなきゃ。

そのための、新軍備計画論なんですね。

井上成美

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