特攻長官大西瀧治郎

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海軍の将官で、腹を切ったという人は、
あまりいないように思います。
飛行機で突っ込んだ宇垣纒さんなんかは、
部下も連れて行ったということで批判を受けたりしています。

戦後の裁判なんかでも、
海軍で死刑になった将官は、
南方の根拠地隊の司令官だった阿部孝壮さんとか、
インド洋で敵交通線破壊作戦で商船を拿捕した
第16戦隊司令官左近允直正さんとかが、
捕虜の取り扱いで死刑を宣告されたというのはありますが、
東京裁判で死刑になった海軍軍人はいません。

海軍が司法取引をしたんじゃないか。
こういう考え方もあると思います。
もう一つ言えるのではないかと思うのは、
アメリカ側も陸軍と海軍は違いますから、考え方が違う、
それと同時に案外海軍というだけで世界共通認識があったんじゃないか、
そんなことも働いているような気もします。

さて、大西さんが全部をひっかぶって腹を切ったおかげで、
ある程度知らん顔した司令レベルの人たちが居ます。
だいたい宗教家になってます。仏教なりキリスト教ですね。
純粋に部下の供養のためにそういう身の処し方をした人っていたのかな。
勝手な想像ですけど、己自身が帰依したのではないだろうか。

陸軍にはいましたね。
何度も何度も特攻を志願した教官が。
藤井一中尉は妻帯者ですし、特攻は許されません。
そのとき妻のとった行動は、子供たちを連れての入水自殺でした。
これで心置きなく行けるでしょう。と、遺言を残して。
ここで軍も事情を酌んで、やむなく許可します。

海軍では、こういう方が話題に出てきませんね。
この本で生出さんはこんな紹介をしています。
「神風特別攻撃隊の戦死者2524名のうち、
 佐官は神雷部隊隊長野中五郎少佐(61期)唯一人である」
この野中さんは、二・二六事件の
中心人物とされた野中四郎さんの弟さんです。
「兵学校出身者は、69期が3名、70期が10名、
 71期が30名、72期が42名、73期が25名である」
「敗戦にあたって、特攻隊の戦死者に対して謝罪し、
 自決した関係将官、佐官、尉官は、大西のほかに見当たらない」

特攻長官大西瀧治郎

生出寿 〈徳間書店〉

まえがき
体当りをやるほかない
「死の踏絵」を踏まされた甲飛十期生
指揮官関大尉は予定の人身御供
大西長官の特攻訓示に感銘せず
玉井副長、中島飛行長と、特攻隊員のズレ
芸者を殴り海大失格という真相
「国を以て斃るるの精神」に傾倒
「戦闘機無用・戦艦無用論」の代表
奥田司令、身代わりで死す
参謀長ではなく乱暴長
乗せられた蛮勇の将
「特攻教」教祖と化す
負けて目ざめることが最上の道
米内海相の人形芝居の人形
二千万人特攻か降伏か
あとがき

昭和19年長月の末ごろ、台南空で搭乗員総員集合がかかった。
高橋俊策司令は「妻帯者と一人息子はここから出るように」と言った。
しかし、誰も出ていかない。
誰もが、そろそろ特攻が始まるということを知っていたためで、
四ヵ月前に結婚したばかりの関行男大尉も出ていきませんでした。
「海軍はいよいよ特攻をやることになった。
 志願するものは、あとで、上司に直接志願書を出してもらいたい。
 ただしこれは、あくまでも志願である」
関さんは「特攻志願書」を寺島美行飛行長に提出しました。
その後すぐ、関さんは201空に転属になります。
201空は、戦闘機の部隊ですが、関さんは艦爆乗りです。
201空には気力充分技量抜群の菅野直大尉がいました。

生出さんは『神風特別攻撃隊の記録』(猪口力平・中島正著)などを
引きながら、このような推察をしています。
ちなみに、猪口は当時の第一航空艦隊先任参謀、中島は201空飛行長。
201空の副長玉井浅一は猪口とは同期です。
そして、第一神風特別攻撃隊員は、すべて
この玉井副長の子飼いの第十期甲種飛行予科練習生だそうです。
「さて、指揮官をだれにする」となったとき、
菅野がいれば。。。というわけですが、
菅野大尉は、飛行機を受け取りに内地に行っていました。
この任務を受けたとき、菅野大尉は拒みます。
そろそろフィリピンで大戦があることは想像がついていたからです。
ところが、中島飛行長が「お前だけ戦地が長いから」と、
いろんな理屈を付けて強引に追い出しましす。

生出さんはこう言うわけです。
「『神風特別攻撃隊の記録』では、
 たまたま菅野が内地に飛行機を取りに行っていたような
 言い方をしているが、はじめから菅野を残すために内地に送り、
 他所から艦爆乗りの関を持ってきたのではないか」


特攻で散華された英霊の皆さんの尊い思い、意思を考えると、
それを指揮した人たちに対しては、
どうしても厳しい注文をしたくなってしまいます。

特攻長官大西瀧治郎

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