井上成美の遺言(海軍兵学校第37期編〈中〉)

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  目次
イントロダクション
海軍兵学校第三十七期編〈中〉
 バタビヤ上陸
 ジャワ攻略
 今村軍政(前)
 サンゴ海海戦
 今村軍政(後)
 ガダルカナル撤退
 命令一下、出で発つは
 消耗戦から籠城戦へ
 海軍乙事件
 マリアナ海戦
あとがき
 状況判断
 統帥乱れて
参考文献


・・・山下将軍(陸一八期)は猛将などと言われます。二二六事件を起こした青年将校に対して同情的な態度をとったため、中途半端に干された形になっていましたが、いざ開戦となり最重要地区と判断されたマレー作戦の司令官におされたほどの人です。マレーの進撃、シンガポールの早期降伏は山下将軍の力量に大きくうながされたものと思います。・・・山下将軍といえば「イエスかノーか!」ですね。

日本側は全軍の即時武装解除を要求していた。パーシバルは内容を一読し、しばらくしてこう言う。
「シンガポール市中は混乱している。非戦闘員もいるので一〇〇〇名の武装兵を残置することにしてもらいたい」
「日本軍が進駐して治安を維持するから心配はいらない」
「英軍はシンガポールの事情をよく知っているので一〇〇〇名の武装兵を保持したい」
「日本軍がやるので安心されるがよい」
「市内では略奪が起こる。非戦闘員もいることだから・・・」
いつまでもウダウダと続けるパーシバルですが、山下からしたら話がつかなければ攻撃は続行せざるを得ず、さらなる犠牲者を出したくないのだ。山下は作戦課長の池谷に確認する。
「夜襲する時刻は?」
「二〇時の予定です」
パーシバル「夜襲は困る」
山下「いったい英軍は降伏するつもりかどうか?」
 間をおいてパーシバル。
「停戦することにしたい」
ここで山下が杉田に向かって放った言葉がこれである。
「夜襲の時刻が迫っているから、英軍に降伏するのかどうか『イエス』か『ノー』かで返事してもらえ」
パーシバル「イエス。一〇〇〇名の武装を認めてもらいたい」
「それはよろしい」
 山下はあっさり答えたという。
 西洋人であるパーシバルは、自分の意見を述べ、細部まで相互に諒解したうえで降伏文書にサインしたい。日本人である山下は、まず降伏の諾否を決定し、細部の事務手続きなどは後回しでいい。死力を尽くして戦った相手が白旗をあげたのだ、わるいようには決してしない。このような感性は西洋人には通用しないのであろうが、とにかく、杉田の言うように、「現地の報道陣が大げさに山下の威容を報道し、戦勝に酔った点があった」のであろう。

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